44.結審
今年のアカデミー賞、結果はもうご存じですよね。
どうもここ数年作品賞はパッとしないのですが(「炊いた肉」?以来・・・)今年私が注目していたのは「エリン・ブロコビッチ」です。キャリア・学歴どころか無職子持ちの女性がアメリカ裁判史上最高額の損害賠償裁判を勝ち取るまでの実話を描いたこの映画、ジュリア・ロバーツのアイドルチックな映画扱いもされたみたいですが、この私のHPが気に入られた方なら、お奨めです。裁判の国アメリカでだったって、素人が裁判を起こせるのですよ。
ちなみにジュリア・ロバーツはアイドル俳優扱いされていますが、「プリティ・ウーマン」の前までは、「マグノリアの花たち」などどちらかと言えば「演技派」女優だったのですが。
「エリン・ブロコビッチ」をレンタルで見るなら、VTRよりDVDをお勧めします。ジュリア・ロバーツが演じた実際の女性のインタビューが収録されています。さて、私の裁判は証人尋問も終わり、これで判決かと思ったのですが、まだありました。
証人尋問が終わってしばらく経って私の元に一通の郵便が・・・・。相手方の弁護士からの直送ですね。
「なんだろう?」と思って中を見ると、証人尋問への反論をまとめたものです。
これもB4のペラ紙。
これがまあ、ここに書き写せないのが残念なくらいの言いがかりの羅列なんです。
つまり、証人尋問でいかにこちらがでたらめを言ったかと言うことが、なんの立証もせず5項目ほど箇条書きで書き連ねてあるだけ。それも、尋問では出てないような意味のことまで推測・想像交えて書いてあります。
挙げ句の果てには、人間の赤ん坊でも便を漏らすのに、ネコを飼っていればそれは当然だ、という、およそ理解不能な言もありました。
驚いたかって?・・・・もう慣れました。
(やれやれ)・・・・・(弁護士さんてのも大変なんだな)というのがその準備書面を一瞥した正直なところでした。
これから裁判を起こされる方々、弁護士さんを相手にまわしたって、何も恐れることはありません。
あなたが車を運転していて、信号待ちをしているところに車が突っ込んできました。相手の車に乗っていたのが弁護士だったって、こんな場合、ひるむ人がいますか?さて、当然こちらも文書一枚書いて裁判所に送りました。
で、これら双方から書類が出されたので、裁判は開かれるのです。それぞれが出した書類を確認するためなのだそうです。
平成十一年(レ)第五号 敷金返還請求控訴事件 控訴人 A子 被控訴人 DAI 準備書面 平成@@@月@日 (送達場所) 〒@@@・@@@@ 徳島県徳島市@@@@@@@ 右被控訴人 DAI 電話@@@・@@@・@@@ 熊本地方裁判所民事第四部御中 一、M(私注・これは私の証人)証人の証言および、被控訴人 側の証人であり@ビル@号室の管理人である@@証人の証言に より、@ビル@号室から被控訴人(本訴原告)が転出する直前 および転出した直後、網戸一枚以外の傷跡、悪臭などの汚濁は なかったことが認められる。 二、@証人(私注・これは大家の証人)は、控訴人(本訴被告 )所有のマンションをリフォームすることにより直接に利益を 得る立場にあり、その証言は信用できない。 三、@証人(これも大家の証人)は、重度の動物アレルギーに 罹患していると証言している一方で、自宅で犬を飼っているこ とを認めるなど、その証言は信用できない。 四、控訴人本人の証言は、自らが抜き打ちで行った調査でも犬 がいないことを認めているのに、存在しない犬がいたなどと証 言したり、警察幹部の多くは知人であると発言するなど、全体 に論理性、一貫性に欠けておりその証言は信用できない。 五、控訴人は、証人尋問の後提出した準備書面で、人間の子供 と猫を比較するような意味の発言をしているが、猫は決まった 箇所以外では糞尿をしない習性があることは猫を飼育せずとも 猫についての多少の知識がある者なら常識の範囲内であり、控 訴人にその知識がなく、その点について被控訴人の証言の際に 指摘されているにもかかわらず、恰も証人が偽証しているかの ごとく主張するのは悪質な言いがかりである。 以上
そのためにわざわざまた熊本まで?と思った私に、わざわざ裁判所から電話がありました。
「電話裁判」でよいそうなのです。
どういうことかと言いますと、今度の法廷は、双方の書類が提出されて、もう後は判決だけということを確認するだけなので、普通そういう場合は一般社会では、遠方の人がわざわざ交通費使って来ません。裁判所でもそういう単純な場合は電話で済むことは電話で済まそうじゃないかと、そういうことで、私は電話で出廷するだけでいいと言う訳なんですね。
もちろん、事前に裁判所が双方に
「確認するだけで終わりだね、突然隠し球とか出したりしないよね」みたいなことを確認した上で、です。
マスコミ報道とか見てますとね、裁判所って朴念仁みたいなところのような気がしますけど、私が今回の体験を通して感じた限りでは、結構がんばってるな、って気がしました。電話裁判当日。
平日だったので、私は午後から休みを取って自宅の電話の前にいました。
5分前にコール。
(来たな・・)新しい趣向にちょっと緊張気味の私が受話器を取ると、書記官さんの懐かしい声。
「DAIさんご本人ですか?」
「はい、本人です」
「すみません・・まだ相手の弁護士さん来てないんですよね、しばらく待っててくださいますか」
・・・・・・・・・。
今回の裁判は待たされてばっかりです。
そして、開廷の時間を十五分ほど過ぎたでしょうか。
「電話裁判は十分くらいで終わりますから」と言われていた時間を過ぎてしまいました。
そしてコール。
またも書記官さん・・と思いきや、なんと裁判長の声。
「あ、DAIさんあのね、なんか弁護士さん、車が混んでるって言ってるんだよね、もう少し待っていただけますか」
「あ、はいはい」
裁判長に言われて待たない原告がいるでしょうか。(あ、いたか)その五分後、ようやく始まりました。
ところが、機材の調子が悪いらしく、裁判長や相手の弁護士の声が大きくなったり小さくなったりよく聞き取れません。
「・・・・ということで・・・・・いい・・・・DAIさん・・・・・」
とこれは裁判長らしき声。
「あの、よく聞こえないんです・・・」
「・・・・からね・・・・・マイクの調子・・・・・・・おかしいな・・・・ちょっと待って」
あまり使われたことがないシステムのようです。
一生懸命努力している裁判所のいろいろな人の姿が目に浮かんで、思わず笑顔になってしまいました。
ま、そんなこんなで、双方の書類を確認して、裁判長が言いました。
「では、判決の日時は、追って指定しますから」(続く)