40.ついに大家とご対面(証人尋問その4・前編)


随分更新が遅れてしまいました。
単なる風邪だったんですが、微熱とくしゃみがびちゃびちゃと一月あまりも続くタチの悪いヤツで、そういうときに限って仕事が忙しいものなんですね。
で、帰宅するともう無気力状態、というか体力が低下していて、猛烈な眠気が・・・・。
というわけでなかなかパソコンに向かうこともできませんでした。
この間、沢山メールも頂きまして、だんだんその内容も「早く続きを書きなさい」というのが増え続けてきまして、そのメールの返事すら書いていない最悪の状況が続くと、「読んでくれる人がいるんだなあ」と嬉しい反面、「早く書かねばあ!」とプレッシャーも強まり、どうにも落ち着かない日々でございました。
で、これを書いている今日(11月13日)、どうもいつものペースよりカウンタがはねあがっているなあ、と不思議に思ってメールチェックしたところ、昨日のテレビ番組(特命リサーチ2000とかいうの)で敷金トラブルの特集をやっていたそうで、それを見て興味を持ってネット検索したら私の所に来たというメールを幾つか頂き、納得した次第です。
ゴールデンタイムのテレビでも特集するなんて、やっぱり悪徳不動産業者&大家は一向に減ってないようですね。
私も微力ながら更新を続けよう、と久しぶりにパソコンの前に座った次第です。まだちょっと本調子ではないので、文章がよろけてたらごめんなさいね。

で、次の証人は大家本人です。
いやもうその形相のものすごいこと。
偉く高そうな白いスーツに真珠のネックレスを(確か二重だったと思いますが)巻き、パッドを詰め込んでいからせた肩をぐいぐいと交互に振りながら証人席にたったのですが、もうその表情と来たら「憤怒」の一言です。たぶん無意識なんでしょうけど、ほっぺたをぷっと膨らませて、太めに描いた眉が吊り上がってます。
でも、なぜか私の方には全く視線を寄越しません。
で、弁護士のおきまりの質問、「名前と住所、それに職業の確認」です。
あのですね、これだけですよ。これだけの質問の答えに、この人2分以上も喋ったんですよ。
別にこの人寿下無さんじゃありませんから、名前は1秒で答え、住所は3秒で答えました。で職業。
「不動産を経営しております。経営といってもたいしたものではございませんが、もともとある不動産の管理ですね。市内に幾つかありますが。それに華道の師範をしております。生徒は@十人かいて、自宅で教えておりますの。それから徳島県の青少年の育成の仕事もしておりまして、@@@という団体の代表も務めております。昨年は@@@の@@@@というイベントで青少年@人を率いて中国に親善訪問に行き、団長を務めたんです。それから特別養護老人ホームの理事長と申しますか、経営もしております。これはもちろんお金儲けなどではなくて、これまで私がお世話になった社会に対する奉仕という考えから私財@億円を投じて作ったんでございます・・・・・」
一体この先どうなるんだと固唾を飲んで見ておりましたが、ともあれ演説は終わり、これもちょっと意表を突かれたというような表情を浮かべている弁護士がようやく尋問を始めました。
内容は、この控訴審のはじめに大家が提出した陳述書の確認のような内容です。
で、加えていかに私の部屋がひどくて人間が住めるような状態ではなかったかという、前出三人とほぼ同じ内容です。
そして私に請求書を出したら、私が電話をかけてきて「人権侵害だ」と罵ったという嘘八百(前にも書きましたが、それにしても同じ嘘をつくなら「殺すぞこら」「ざけんじゃねーよ」とかなんとか脅した、っていうほうがまだ真実味がありそうなんですけどね)。
ただ、さすがに大家といいますか、やっぱりうまいんですね、前の三人に比べると(ハウスクリーニングのおばさんは論外ですが)。
たとえば私の部屋がいかに臭かったかを話すときは、思いっきり顔をしかめ、手を振りながら
「もう、なんと言えばよろしいのかしら。嗅いだこともないようなひどい臭いでございましたの。いままで沢山の方に部屋をお貸しいたしましたけどね、こういうことはもう、初めてでございまして」
って、デビ夫人ですか?って具合です。
私が尋問する番になりました。
でもこれ、意外と難しいんですよ。この大家の長い長い嘘話を片端から反論したいのは山々なんですが、「反論」というのはここでは認められないわけです。ここはあくまでも反対尋問ですから、「あなたそういっているのは嘘でしょう、それはこうでしょう」という事を言うと、たちまち裁判長から「それは質問ではないでしょう、論争はやめなさい」と制止されてしまうのです。
反論は、準備書面なり、自分自身の陳述で行えばいいというのはまあ、筋論としては理解できますが、ついつい反論じみてしまうのが本人訴訟というものですね。
ただまあ、時には止められるのがわかった上で「反論」するのが効果的な場合もあります。裁判官たちにどうしても強い印象を与えておきたいときですね。たとえばこんな風。

大家が私が飼っていたと主張してやまない幻の犬について。
私「そんな犬なんていないって、あなた、自分で突然勝手に私の部屋に入り込んで、それも同居人の目の前で家捜しして確認したでしょ」
大家「お花の生徒たちも犬の声を聞いているんです」(前にも書きましたが、大家の「別宅」は一階下)
私「向かいに酒屋がありますね」
大家「ありますよ」
私「三階建てのビルですね」
大家「それが?」
私「その屋上で犬を飼ってますね。あなたの言う犬の鳴き声って、その犬の鳴き声でしょう」
大家「知りません、そんなの」(うろたえてる)
私「知らないわけないでしょ、あなたのところと同じ高さで道一本離れているだけですよ」
ここで裁判長が「はい、その話はそれくらいにして」と止めに入ります。
もうまるっきり本筋の話とずれてるし、提出されてる証拠とも関係ない話なので、止められるのは覚悟の上なんですが、裁判長だって止めようと思えばもっと前に止められたはず。ある程度の興味はあるわけなんですね。
ただ、これはこれから私が本筋の尋問をするための前哨戦。
この段階で大家がどんな人間なのかを裁判官に印象付けるのは悪くないはずです。
この一連の論争の中で、大家がなぜか闇雲に主張している「幻の犬」の話が極めて眉唾だと分かるだけでなく、陳述書でははっきりと認めていなかった「勝手に人の部屋に入り込んで家捜しした」ということまで認めた格好になっています。
もちろんやり過ぎると却って自分がマイナスイメージですから退くときはさっと退きたいものです。

(続く)