32.裁判のオプションを利用しよう(おまけ・附帯控訴状の書き方)


証人の申し立てに加えてもう一つ、「附帯控訴」なるものを知りました。

通常、控訴というのは判決が下りて二週間以内に不服がある方が申し立てるわけです。
二週間を一秒でも過ぎちゃえば絶対に認められないのはよく知られた通り。
でも、原告被告双方が控訴した場合はともかく、勝訴した方は満足ですから控訴しないのに、負けた方が一方的に控訴すると、控訴審では攻撃と防御が反転するわけですね。
まあ、必ずしも防御に回ることが不利というわけではないのですが、やはり攻撃のカードを持って置くに越したことはありません。
ですから、控訴された方は二週間という期限に関係なく新たに控訴(相手方の控訴に附帯するという形で)することができるという決まりがあるんです。
これは控訴審が終結するまでの間、控訴された側はいつでも申し立てることができます。

裁判ていうのは、意外に知られていない例外規定(じゃないんでしょうが)、オプションみたいな便利なものがあるものですね。
で、早速利用することにしました。
いくら利用しても裁判所のオプションはタダだしね。
控訴だ反訴だと一方的に攻撃されているんじゃおもしろくありません。
何となく暗くなってくるし、こっちばかり答弁書書いているのも癪ですから、向こうの仕事の遅い弁護士にも附帯控訴の答弁書を書くという仕事を増やしてあげましょう(そういう問題ではないのだが(^^;)。
私の信条は「攻撃は最大の防御」でありまして、ゲームでもなんでもひたすら攻めまくるのが信条ですから、使えるものはこの際何でも使うことにします。

附帯控訴状の書式は控訴と同じです。

以下、実際に提出したものです。




        附帯控訴状

        〒@@@・@@@徳島県徳島市@@@@@@@
               附帯控訴人       DAI
        〒@@@・@@@熊本県熊本市@@@@@@@
               附帯被控訴人      A子

敷金返還請求附帯控訴事件
  訴訟物の価額 金三万三千円
  貼用印紙   金

右当事者間の御庁平成十一年(レ)第十八号敷金返還請求控訴事件につき、左の通り附
帯控訴する。

平成十一年六月二八日

                         附帯控訴人   DAI
熊本地方裁判所民事第四部御中


     原判決の表示

  主文
一 被告は、原告に対し、金一一万八四二〇円を支払え。
二 原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
四 この判決は仮に執行することができる。



    附帯控訴の趣旨
一、原判決中原告(附帯控訴人)のその余の請求を棄却するとある部分を取り消す。
二、被附帯控訴人は附帯控訴人に対し三万三千円を支払え。
との判決を求める。

    附帯控訴の理由
 原判決では、退去後の清掃費用三万三千円について、賃貸借契約の特約事項として原
 告の請求を棄却しているものである。
 しかし、本特約事項は本件のような部屋の全面的な改装を前提としているものではな
 く単に次の賃借人のための退去後の清掃費用の負担を義務付けているだけである。
 本件においては、原告が退去後、被告が床やクロス、天井の張替えなど、部屋の全面
 的な改装を行っているものであるから、退去後の清掃がそれ以前に行われることは不
 合理であり、退去後の清掃自体が不要であるから、本件特約も無効である。
 全面的な改装が終了後に清掃が行われたのであるとすれば、原判決でも認めているよ
 うに、全面的な改装は原告の責ではないのであるから、当然その費用は被告が負担す
 べきものである。
 以上の理由により、原判決は一部事実の認定を誤ったもので、本件控訴に附帯控訴し
 てその変更を求める。
                                    以上。



で、いつものように解説でございます。
(それにしても自分で書いた、それも素人の裁判書類を解説するっていうのも、いい度胸というか、臆面もない)

1)最初にタイトル「附帯控訴状」と書きます。

2)次にいつもの関係者の表示。面倒くさいし書き間違いなどあったら困るので、私はワ ープロに登録して毎回コピーしてました。

3)事件名「敷金返還請求附帯控訴事件」。
 金額は一審で認められなかった部分です(判決の項参照)。
 印紙のところは空欄にしておいて、裁判所で聞きましょう。

4)で、ここが控訴状の特徴ですが、はじめに原判決の主文のところをそのまま引用しま す。そのあとに「附帯控訴の趣旨」として、どう原判決を変更してほしいかを書くわけ です。

5)その後は訴状などと同じように、その理由を簡潔に書けばできあがり。
2部コピーし、自分の名前のところに印鑑を押して裁判所に出すだけです。

今回は、前述の証人の申立書と一緒に裁判所に当日持っていくことにしました。
これで、私が第二回弁論までに私が準備する書類は、時間的に無理だった反訴状への答弁書をのぞいてすべてそろったわけです。

(続く)