31.証人は義理と人情の板挟み(おまけ・証人申請の仕方)
さて、もう一つ第二回目の弁論までに私がやっておかなければならないことがありました。
「証人を呼ぶための申請をする」ってことです。
この場合、基本的には一審で出した陳述書の関係者を呼ぶのが一般的です。
しかし、です。
これが気が重いんですよね。
陳述書を書いてもらうのもかなり気兼ねするんですから、「裁判所に来てね」なんてそう簡単にお願いできるものじゃありません。
裁判所に行くってだけで、結構緊張を強いるものだとは、以前に書いたとおり。
あの時の酒屋のおじさんも、仮に自分はよくても従業員の身、裁判所に行って地元の実力者に楯突くような証言をするといったら、酒屋のご主人夫婦も迷惑に違いありません。 かなり悩んだ末、証人として来て頂くのは遠慮しました。
この判断が正しかったのかどうか、わかりません。
ただ、私としては、自分自身のことであまり周囲に迷惑がかかるようなことはやめよう、というのが基準でした。それから、引っ越すときに私以上に大家からひどい目にあった「@@@システム」さん。
こちらはお願いすれば快く引き受けてくれそうな雰囲気はありましたが、やはりお願いするのはやめにしました。
こちらの方は「迷惑がかかるから」ということではなく、二審での議論を「部屋が汚かったのかどうか」に絞ろうと思ったためです。
大家がいかに阿漕な因業大家かどうかは「@@@システム」さんの陳述書を読めばすぐにわかることですし、それ以上法廷の場でつっこんでみても論点が広がりすぎてむしろ私の手に負えなくなってしまう可能性をおそれたためです。
これはまあ、今思えば冷静な判断だったと思っていますが。それでは誰を呼ぶのかといえば、残るお一人、私たちが転居する一ヶ月前に我が家を訪れた@@@さんです。
まあ、友人・知人という点を差し引いたって、大家側が呼んでいるような下請けの業者に比べれば説得力があるというものです。
それにその方は、素直な、たとえ知人でも間違ったことは許さないぞ、という人で、そういう性格が見かけや話し方にもにじみ出ていて、さらに法廷にでても全く物怖じしそうにもないタイプですから、裁判官たちに対して説得力はあるんじゃないかな、と思いました。
ただ、その方は千葉に引っ越していて、仕事も持っています。
旅費はもちろんこちらが負担しても、やっぱり私の裁判なんかのために仕事を休んでわざわざ来てもらうというのは、気が引けます。
かなり逡巡したのですが、結局電話してお願いしました。
二つ返事でOKとのこと。
うれしく思いましたが、反面申し訳なくて受話器を持ったまま頭を下げておりました。裁判をやっていてつらいのは、こういうことですね。
確かに、自分の時間を割かれたり、「不毛な相手と争ってなんになる」という思いに駆られたり、疲れたなあ、と思ったりというつらさはあるのですが、そういうのはぐっすり眠ったり、裁判のあと熊本の知人と馬鹿騒ぎやったりすると気が晴れるものです。
でも、自分の裁判のために関係ない知人にまで迷惑をかけてしまうというのはどうにも後味の悪いものです。まあ、証人を呼ばないでもよいとは思うのですけれど。
結局私の場合、@@@さんと私本人だけでしたので、証人を並べたてることがどれだけ大事なのかどうかということは、よくわかりません。
いないよりはいた方がいいのは間違いないと思いますが。で、実際に私が証人を呼ぶために申し出た書類を参考までにおまけに付けておきます。
ほとんど、大家側の弁護士が出してきた申請書類の引き写しです(^^;
この中にある
「尋問予定時間」は目安です。
適当でかまいません。同行・旅費日当というのも、おきまりです。
平成十一年(レ)第十八号 敷金返還請求控訴事件 証拠申出書 被控訴人 DAI 平成十一年月日 熊本地方裁判所民事第四部御中 一 人証の表示 1 〒@@@・@@@@ 千葉県@@市丁目番 証人 @@@ @@ (尋問予定時間三〇分、同行、旅費日当) 2 〒@@@・@@@@ 徳島県徳島市番丁目番地号 被控訴人本人 DAI (尋問予定時間三〇分) 二 証すべき事実 被控訴人主張事実。 三 尋問事項 別紙の通り。 尋問事項 証人 @@@@@ 一 証人と被控訴人の関係について。 二 証人が本件部屋を訪れた際の部屋の状況について述べてください。 部屋に汚れや傷が存在したかどうか、悪臭を感じたかどうか、更に飼い猫による傷 があったかどうか述べてください。 三 陳述書(甲第五号証)の内容について補足説明してください。 以上 尋問事項 被控訴人本人 DAI 一 本件部屋に飼い猫による傷、毛の散らかり、臭気などがあったか。 二 猫以外のものでも、部屋に傷、汚れなどがあったか。 三 原告が退去する際の状況と被告および、管理会社の対応はどうだったか。 四 日常における部屋の掃除など手入れの方法はどのようであったか。 五 被告による原告、または原告の同居人、または原告の家族、または本件建物に入居 する他の賃借人、または本件 建物の近隣住民に対する本件以外の不当な要求や 対応はあったか。 六 なぜ原告は話し合いで解決できず本人訴訟するに至ったか。 以上。
(続く)