27.新たなる敵


いやー、判決が届いた日は妻と祝杯をあげました。
近くの居酒屋で「かんぱーい」なんて言って。
しかし、当然ひとつの事柄が気にかかるわけです。
そう、

「控訴」

ってやつです。
判決が下りた日から二週間の間に判決に不満があるなら、誰だって控訴する権利があります。
と、わかってはいるのですが、まあやっぱり「大家が控訴しなかったらこれで終わりだよなあ」と考えてしまうのが人情っていうものです。
でも一方で、「あの因業大家がこのまま黙ってるわけはないよなあ」とも思います。
なかなか長い二週間でした。
で、二週間が経ち、さらに一日、二日が過ぎ、「お、控訴しなかったのかな」なんて考え始めた頃、来ましたねやっぱり。
さすがは大家、ニクい演出です。

(以下、控訴状を一部引用します。
なぜ「一部」かと申しますと、裁判書類にも著作権が適用されるという説が結構有力なんですね。今のところ明確な判例は無いそうですが。ですから、私が作成した書類はすべて包み隠さず公開しますが、相手方のほうは「引用」ということにしておきます)

「控訴状」
というタイトルがあって、大家の名前と私の名前、
それから「この前の判決は全額不服であるから控訴する」という文言があって、 この前の判決の主文のところが載ってます。
次に
「控訴の趣旨」
という欄があって、
一原判決を取り消す
二被控訴人(つまり私)の請求を棄却する
三訴訟費用は第一,二審とも被控訴人の負担とする
との判決を求める
と書いてます。

「控訴の理由」には、
私が裁判の請求原因として主張する事実や大家の主張は、「原判決の事実摘示の通りだが、原判決は事実誤認の違法があり取り消しを免れないものである。」
としています。
その理由については
「おって、準備書面をもって陳述する」とあるだけです。
(全部でたった三行)

まあ、書式通りの控訴状の書き方見本のようなもので、おそらく司法書士に頼んで控訴の手続きだけ進めた、ということですね。
提出した日付も、ぎりぎり二週間目だし(日付欄が空欄になって、手書きで書き込んでました)。

正直言ってがっかりしましたが、七割方は予想していた展開です。

今度はこちらがこれに対して「答弁書」を書かなければなりません。

裁判所からは第一回弁論期日が決まった旨の「呼出状」が届きます。
いついつまでに「答弁書」を提出せよ、とあります。
といっても、控訴の理由が全く明らかではないですから、提出したのはこれだけです。





平成十一年(レ)第五号
敷金返還請求控訴事件

                           控訴人  A子
                           被控訴人 DAI


右敷金返還請求控訴事件につき左記の通り答弁する。


平成十一年五月 日

                 (送達場所)
                 〒@@@@@@
                 徳島県@@@@@@@@@@@
                          右被控訴人 DAI
                 電話@@@・@@@・@@@@


熊本地方裁判所民事第四部御中





           答弁書

第一 控訴の趣旨に対する答弁

 一、控訴人の控訴を棄却する。
 二、控訴費用は控訴人の負担とする。
との判決を求める。


第二 控訴の理由に対する答弁

 「控訴の理由」中、「被控訴人が、本訴の請求原因として主張する事実
および控訴人の主張は、原判決の事実摘示の通りである」の部分について
は認める。その余部分については不知または争う
                              以上。

まあ、簡単なものです。
これをやはりコピーして印鑑を自分の名前のところに押して裁判所に送るだけ。
後はいったいどんな「準備書面」が送られてくるか、待っていれば良いのです。

すると来ました来ました、なんとファックスで。

前にも書いた新民事訴訟法の改正で、裁判所の負担の軽減のためでしょうが、双方の書類のやり取りは「直送」が原則となり、その方法はファックスでも可、となったのです。
もちろん、あの大家にそんな知識があるわけも無く、弁護士事務所からです。
「おお、今度は弁護士立てたのか」なんて思いながらも、私はファックスを持ってないので、会社のファックスに送ってもらいました。
(ちなみに私は仕事で出ていたので、代わりに上司に受け取ってもらいました(^^;)。 しかしまたまた拍子抜け。
弁護士立てたのだからどんな大層な書面が送ってくるのかと思っていたのですが、やってきたのはスカスカのB4一枚だけ。
それも理由のところは三項目、たった9行で、こんな内容でした。

一、原判決は事実を誤認している。それに一部大家の分を認めているのに(注・ハウスクリーニング費用のこと)全額訴訟費用を大家に負担させたのはおかしい。

二、原判決は猫の悪臭や毛の固着、傷跡等を原因とする建物の修復工事として41万8268円を要したことを認める立証が無いとしたが、この判決は事実の誤認であって、控訴人はこの点についてこれからさらに立証を尽くして、判決の事実認定が誤りだったことを明らかにする。

三、なお控訴人は、被控訴人(繰り返しますが私のこと)に対して反訴、あるいは、別訴を提起する予定である。

どうです、いまだに控訴理由がありません。
「控訴人はこの点についてこれからさらに立証を尽くして」なんて、早い話が「今から考えます」って言ってるわけで、ちょっと間抜けですよね。
弁護士だって言葉のプロなら、もちょっと表現を工夫したほうがいいと思いますよ(余計なお世話)。

そして何よりも、「また裁判始まるのか」と萎えかけてた私を再び奮い立たせたのが、三番目の項目です。
これは要するに「あんた逆に訴えてやるんだからね、後で泣き入れたって知らないよ」とチンピラがお上品に脅しているわけです。
前にも書きましたが、もう一度書きます。

・・・・・・喧嘩上等・・・・・・・

素人だと思ってなめんじゃねーぜ。

法律の専門家さんが勝手に理屈をこねあげて、いくらでも訴えてみなさい。
どんな弁護士だか知りませんが、こっちはタダで道理を教えてあげましょう。
相手にとって不足はない!
(なさすぎるって(^^;)

(続く)