34.結婚は大家の許可を取ってから


ということで第二回弁論です。
今回も向こうは弁護士だけ。
裁判官たちが入って一同起立、礼、着席。
裁判長が口を開こうとすると、やにわに大家の弁護士が立ち上がり、鞄からわらわらと書類を取り出して裁判官席に配り始めました。
”悪の賃借人糾弾!”なんてビラでも撒くのかと思いきや(そんなわけはない)、いつものようにぎりぎりになって出してきた書類の数々です。
書記官も手伝って、私のところにも配ります。
この仕事の遅い弁護士のおかげで、法廷は印鑑を押したり数を確認したりと、一時、会議の前のOLみたいになってしまいました。 で、今回出してきたもの。
証拠証書が4つ。
まず、大家本人の陳述書です。
これが長い。大作です。
今ざっと数えてみると、一ページが51字×21行で1071字。
これが6ページ。
余白もありますから、もっと少なくなるとしても、計算上は約6000字。
400字詰めの原稿用紙で15枚。
すごいですね、この怨念。
もちろん中身も壮絶です。
全文紹介したいところですが、著作権のこともあるし・・・、なんて、そんな問題じゃないですね。
いくらなんでも6000字、全部ここに書き写す努力はあまりに無意味です。
しかし、大変おもしろいですから、さわりだけでも引用しましょう。

(入居の経緯を説明して、男二人の入居は最初から不安だったと書いた後)

その意味で、男性二人の入居については、過去にそのような契約の事例はなく、幾分の
不安もありましたが、「退去の際は二人まとめて出ます。家主さんにはご迷惑おかけし
ません。」との念書を差し入れますとの申し出があったこと(中略)等から快く契約し
たものです。
しかし、念書の差し入れはありましたが、K氏のみの押印で、原告は後から押印すると
申し立て、結局、署名のみで、押印はなされていません。
今になって思えば、このような契約を当初から違反するつもりであったのか、そうでな
ければ、このような契約事態を軽視するような非常識な人間性の人物であったのかと疑
念を抱かずにいられません。

引っ越ししてから一月ほどたった頃、管理人が夜やってきて「大家が出るときは二人まとめて出て欲しい」という念書を出して欲しいと言ってきたことがありました。
もちろん、私たち二人が同時に転勤する可能性はかなり低いし、入居する前はそんなこと全く言われていなかったので断りました。
するとしばらくして管理人が再度訪れ、「あくまで形だけでいいから、実際には出ていかなくていいことは私が証人になるから、大家がうるさいからとりあえず出してくれ」と言われ、あまりしつこいので、そのとき対応したKがその場で署名捺印し、後で帰ってきた私に相談したわけです。
で、私はそんなもの出さない方がいいよ、と言って、後で私の印を取りに来た管理人にもそういって断り、同居人の署名捺印分も破棄するように頼みました。
管理人はそのとき納得していましたので、当然廃棄されたものと思っていたら、今回裁判で持ち出してきたわけです。
ハンコ押さなくて本当に良かった・・・・。


入居時の修理以来について

(中略)
ダイニングキッチンの壁のクロスの剥離に対する申し出には、すぐに対応しています。
(ならどうして管理人立ち会いの時にもはがれているの?)
台風19号の際の雨漏りについては、後日確認したものですが、台風が過去最大級の特
別なもので、例年来襲する台風の規模では雨漏りの心配はないこと、このような被害を
完全に防ぐためには、根本からの工事が必要で相当の予算が見込まれることなどから対
応していないことは事実です。
(私が住んでいたのは木造二階建てのアパートだったのか?)


契約内容変更の報告義務違反について

私は、原告およびK氏両名との間において、賃貸借契約を締結していたもので、@K氏
が退去されること、Aその後結婚され、新たに新妻と生活されていたことの報告はなさ
れていません。
(中略)
改めて言うまでもなく、入居者の状況(原注・入居人数、独身か世帯か等)を具体的に
把握することは、貸主の責任として、風紀維持の点からも、また、賃貸料を決定する際
の基本的事項として、最も重要なことであり、賃貸料を遅滞なく支払えば良いという問
題ではないのです。
(みなさん、結婚するときは大家の許可を取りましょう。さもないと金を請求されますよ)


(なんとこの章は、猫についてではなく、前に書いたあの「幻の犬」について割かれているのです)

動物の飼育について

(中略)
「私自身、何度も鳴き声を聞いており、動物を飼育している事実は間違いないと確信し
ていましたので、その事実を現認すべく、暇を見つけては何度となく原告の部屋を訪ね
ましたが会えませんでした」
「約一ヶ月半後に原告の部屋を訪ねたときに、原告の部屋の前の廊下にダンボールが放
置してありました。そのダンボールには、室内で小動物の飼育をする際に、小動物の寝
床として準備するようなバスタオルが敷いてあり、飼育の事実があったことを確信しま
した。今となって思えば、証拠品として保管するか、写真で残しておくべきだったと後
悔していますが・・・(略)
そうですね、私も見たかった(^^)


↓ここでは、退去するときに私の妻が管理人に「足りない分はすく振り込みます」など と話したという嘘八百が書いてます。で、請求書を大家が私に送ったら・・・

退去時

その後、原告から電話があり、「人権蹂躙だとか、名誉毀損で訴える」だとか(変な文
ですが原文のまま)、あまりの豹変ぶり、脅迫したような態度に恐怖心すら抱いたので
す。


↓文字通り、大家の感情がぶちまけられています。

その他

私は(略)、不動産賃貸業を営んでいますが、このようなトラブルは初めてです。
契約の基本的事項に違反していながら、都合のいいところだけ認め、私自身が不当な請
求をしているように申し立てる原告の人間性を疑うとともに(略)、横柄な態度が許せ
ません。
いうまでもなく、金銭的な問題ではないのです。
私は、本年四月に私財を投資(約二億五千万)し、「特別養護老人ホーム」を開所いた
しました。私自身の現在があるのも、社会のお陰であり、その感謝の気持ちを何らかの
形で還元したく、来る高齢化社会のために、福祉の一助として数年前から準備してきた
ものです。
当老人ホームには、施設長として運営にあたりますが、給与はすべて寄付する予定です。
また@年前より「熊本@@の会」会長として、私財を投資し、将来を担う子供の育成に
も携わっています。
「私財」を「投資」するのがずいぶんとお好きなお方のようです。
それにしても、ねえ。

(続く)