23.渡る世間に鬼はなし!(その2)


@@@@システムさんの社長さんと副社長さんにお礼を言って後にした私と妻は、再び酒屋さんに戻りました。
貴重な証言が得られたことへのお礼と、あわよくば、配達のおじさんが戻っているかもしれないと考えたためです。
今度は菓子折りのひとつも、と思ったのですが、酒屋に菓子折りっていうのもなんだかなーと思ったので、無農薬のお茶のセットにしました。
で、酒屋さんを覗いてみると、さっきのおばさんが「あれあれ。困ったね」という愛想笑いを浮かべてます。
配達の人はまだ戻ってはおらず、少々がっかりはしましたが、@@@@システムさんからとても丁寧に対応してもらって、貴重な話も聞けて、ほんとに酒屋さんのおかげです、みたいな話をしておりました。
(実は、@@@@システムさんのお話では、ここの酒屋さんも大家から「敷地内に車を止めた」とか(配達の車ですよ)、なんとかで散々怒鳴り込まれて、そればかりか店のあることないことでたらめの噂話を流されたり、相当ひどい目にあってると聞かされて、私たちは驚いたところでした)。
で、一〇分ほども話して、お茶をお渡ししてそろそろ帰ろうか、とした時、なんと、配達のおじさんが帰ってきたのです。
「おや、ひさしぶりですねえ」
人懐こい笑顔を浮かべたおじさんが話し掛けてきますが、私たちは、あまりのタイミングのよさに呆然です。
おばさんが事情を説明し、私があわてて、「もしよかったら陳述書書いてほしいのですが・・・・」ともう絶対にだめだろうなと半ばあきらめてたずねたところ、ふんふんと聞いていたおじさんが一言
「よかよ」
思わず私と妻は顔を見合わせました。
こんなに簡単に承諾してもらえるなんて、思ってもいませんでしかたら。
「え、いいんですか」
「よかよか。だってほんとのことやけん。嘘やったら書けんけどな。ほんとのことやったらなんぼでも書いちゃる。今ここで書くとな」
といって笑っています。
あわててバッグから便箋を取り出し、お渡ししました。
それが次の陳述書です。

陳述書

私は@@@@ビルの前にあります酒店「@@@」に勤める者で、配達業務などを行っております。
@@@@ビル@号室のDAIさんの部屋にも度々配達しました。その際には夫人が応対して室内にて空のビールケース等引き受け、引き渡しをする訳ですが、普通の家庭と同じく、変わったところは無く、異臭を感じたこともありません。
猫はいましたが、おとなしくひとなつこく、頭をなでてやることもありました。
私の見た限りでは部屋が荒れているという印象はありません。
以上

平成@年@月@日
@@@@印

いやー、ほんとにうれしかったですね。
陳述書を手に入れたこともですが、できれば係わり合いになりたくないような、それも他人の、しかも引っ越してしまった人間に、こんなに親身に協力していただけるなんて。 感激しちゃいました。
帰途荷物になることは承知の上で、上等の日本酒を二本買わせてもらい(^^;、何度も何度も頭を下げて酒屋を後にしました。

本当なら裁判と取材(?)を終えて疲れているはずなんですが、ホテルに戻った私も妻も、うれしさのあまりちょっと興奮気味で、なじみの酒場へ行ってマスターやママさんに長かった一日の話を残らず話して聞かせたりしてました。

裁判って言うのは、こういう出会いもあるのですね。

(続く)