13.裁判の起こし方(その2) 本訴か少額訴訟か


 さて、自分で裁判をやることが決まれば、敷金返還程度の金額ですから、次は普通に裁判を起こすのか、それとも最近はやりの(かどうか知らないけど)少額訴訟か、ということになります。
 少額訴訟は、新聞やテレビ報道、それに裁判所に置いてあるパンフレットなどで素人が気軽に裁判所をできる画期的なシステムなどというふうに紹介されていますのでご存知の方も多いでしょう。
 弁護士会など他の多くのホームページでも紹介していますので、それを参照してもらうことにして、ここでは具体的な手続きなど詳しい方法は説明しません。
 ただ私の考えで言うと、次の条件に当てはまる人は少額訴訟は止めたほうがいいです。

@裁判地が遠距離の方。
A相手がかなり悪質な場合。
Bどちらかと言うと自分は気が弱い方だと思う方。

@について・・・
 少額訴訟は一回きりの裁判です。証拠類などもすべてその一回だけの提出しか認められていません。
 ですから、裁判地が遠いところですと、その準備や打ち合わせのために何度も裁判所などに足を運ばなければならず、結局手間は普通に裁判するのと変わらない上に、後であの書類を出し忘れたなんてことがない分、お得です。

Aについて・・・
 少額訴訟は一回だけの裁判で、その場で判決も出ます。判決に対して控訴することはできません。
 しかし、判決に不服ならそこから普通の裁判に移行することができます。
 相手が悪質な場合は、自分に有利な判決が出なければ普通の裁判に移行することは目に見えています。
 そうなると、少額訴訟の判決は、両者の言い分を足して二で割るような内容がほとんどですので、少額裁判の場で自分が譲歩したことが後の裁判で不利に働くこともあります。この場合、初めから普通の裁判で争った方が良いのは当然です。

Bについて・・・
 少額訴訟は一回きりで終わりますから、裁判に慣れない普通の人でもそれほど負担ではないかな、という気がします。
 大間違いです。
 今まで裁判所に行ったこともない人が、たった一回きりの裁判で白黒つけろというのです。まごまごしていれば言いたいことも言えないうちに終わってしまいます。
 裁判官もできるだけ早く終わらせたいものですから、かなり高圧的に進めるようで、実際に体験した人の話を聞いても「ほとんど話を聞いてくれなかった」「一方的に話が進んで、これでいいですねって感じで終わった」という感想を漏らしています。
 それに対して相手は不動産の経営者。すでに「少額訴訟対策マニュアル」なんてものも業界の組合を通して出回っているそうです。
「自分は交渉ごとは苦手なんだけどな」というような方は、普通に裁判する方が良いでしょう。
 普通の裁判であれば、少しずつ裁判のノウハウなどの情報も手に入れることもできるでしょうし、裁判所の雰囲気にもそのうち慣れてくるでしょう。運良く親切な裁判所の書記官にあたれば、いろいろアドバイスしてもらえるかもしれません。いよいよ自分でどうにもならないと思えば、その段階で司法書士を相談したり、弁護士を雇っても良いわけですし。

 もともと少額訴訟と言うのは、増えつづける裁判(特に敷金返還や悪徳商法など)に音を上げた裁判所が、事件を右から左に片付けていくために作ったもので、裁判所に気軽に来てもらおうなんて言うものではないのです。
 「誰もが裁判を起こせる」というのは本来裁判の正道のハズですので、少額訴訟でなくても大丈夫なのです。
 と言うわけで、次回からは実践編です。

(続く)